年末ICU当直日誌1

その夜4回目のポケベルが鳴った。 腕時計を見ると2:30AM。
表示された番号にかけると研修医の報告が聞こえてきた――

「スミスさんの下肢を切断することになりました。」

瞬時に嫌な汗が背中を流れる。

移植手術後、術中に挿入された太もものカテーテルが恐らくの原因で足の血流が低下していた人の話だ。カテーテルはすぐに抜去したものの足は冷たく腫れ上がり、急いで血管外科にコンサルトし、筋膜切開を行った。

ほっとしたのもつかの間の出来事である。。。

二十代の若さですでに4回も手術を経験し、今回もあわや術中死も覚悟かと思われるくらいオペが荒れた。死線をくぐり抜け、なんとかICUまでたどり着いた。

(一命をとりとめたのを喜んでいたとたん・・・)

この出来事である。

言葉もない。

一日24時間×10日間に渡って続くICU担当は、初日から荒れた。

担当患者が20名以上にふくれあがり、3日目からはぼくと上級看護師の二人だけで治療に当たった。このうち3-4名は「今夜が山場です」状態が連日続いている患者で心臓エコー、ライン留置、気管支鏡検査と仕事がひっきりなしに続いた。午後5時頃、昼食のパンをかじりながらコンピューターを開くと、書かなければいけないカルテが30以上画面を真っ黒に埋める。。

そんな日が続いた。

足の血流障害について報告を受けていたはずだ。しかし、容態が小康状態に入った患者にかんしては

(ガードが緩んでいたのではないだろうか・・・?)

と、考えだすと胃が痛む思いがした。

友人の血管外科医に手術を頼み、なんとか足を救う手だてがないものかすがってみるが、彼は申し訳なさそうに首を振った。

「命が助かっただけでもラッキーなひとだったんだから、そこまで気を落とすことはないよ」

と慰められる。。

翌日の朝の回診では患者の家族が烈火のごとく怒っていた。無理もない。

命を救ってもらったのは感謝しているが、いまはやりきれない気持ちでいっぱいなことだろう・・・。

ぼくは医療チームの前で何十分にもわたって家族に謝り続けた。

つづく




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