ロジカルな国の「芸」人

米国では麻酔看護師になりたい場合、集中治療部で看護経験を数年こなすことが応募条件です。というわけでICUで働いていると麻酔看護師志望のナースによく出会います。

前回の記事でも書きましたが、医療現場で行われている業務のほとんどが「医師」でなくてもできることばかりです。麻酔管理も一定の看護経験と2年間の麻酔看護学校に通えば、研修医と遜色ないレベルの(あるいはそれ以上の)麻酔管理を行ったりします。これは、麻酔科研修医にとっては脅威で、「こちらは合計8年の大学・大学院教育と2000万の借金を背負っているのに看護師が割り込んでくるとはけしからん」というような気分が出てくるのも事実です。

個人的には、こちらの麻酔科医は年収を稼ぎすぎているので低い賃金で(それでも看護師よりは高い賃金で)働く麻酔看護師がいる場合仕事をとられるのは仕方ないと感じる部分もあるのですが。。

構図としては、安い賃金の中国に市場を奪われるのと同じです。

というわけで、アメリカではいつもキャリアアップを目指してがんばっている人がいます。

ただ、そのモチベーションをのぞいてみると「お金を稼いでいい生活をしたい」の一言につきるので、この延長線上には「お金を稼ぐ役に立たないことはなにもしたくない」という功利精神(?)がまっています。

レストランでも「チップをくれなければサービスをしたくない」というような話にもなりますし。

そういった環境の中で「いま何の役に立つのか分からなくても、今できることを一所懸命がんばったほうがいいよ」といった論理を説くのはいささか困難を伴います。

ぼく自身はこの「いま何の役に立つか分からないこと」を指向した結果が吉と出たことがあるので悪くないと思うのですが、ま、医学部を卒業するまでにマンション一件分の借金を背負うこともなく、プレッシャーも違うかも。

「すきやばし二郎、寿司を夢見る」という米国のドキュメンタリーが数年前アメリカで上映されました。ここでは、銀座の地下鉄近隣の一角に構えた店で頑固に寿司を握り続け、ミシュランで3つ星をとり続ける最高齢の料理人、小野二郎をカメラが追い続けます。

この映画が非常にアメリカ人の間で好評です。

「お金のことばかり考えて営利を追いかけるのは二流」
「10年一つのことに精進してやっと一人前」
「若者のくせに自分に向き不向きがあるとおもうな」

といった、いわゆる江戸っ子職人気質的発言がたくさん出てくるのですが、この資本主義の対極に位置する発言がアメリカ人には新鮮に映るようです。この反応をみて彼らにも職人気質を理解するレセプターがあるのだと、へんなところに感心しました。



米国人は戦争のような合理主義が勝利を収める局面では非常な力を発揮しますが、武道のように「芸」が入りこむと、教える側から学ぶ側にまわります。

また、面白いことにこの「芸」に関しては北欧人に感受性があるらしく優れた武道家や料理人が北欧に多くいたりします。

たしかに量より質を重んじる気風が北欧諸国には感じられますね。

合理・重量が重んじられる国で、「芸」に精進しながら生きてみたいものです。





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 5

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い
ナイス

この記事へのコメント

夏目園子
2013年10月14日 18:53
やっぱり海外に生活すると、日本が懐かしくなる。日本のテレビ番組も懐かしい。www.tv-rec.comにめぐり合った。日本のニュースやテレビ番組を全部即時に見ることができる。毎日も楽しくなる。

この記事へのトラックバック