Fair Winds, Following Sea, and a Movable Feast

若いときに巴里で過ごす幸運に恵まれたなら、君は巴里と共に生涯を過ごすことになる。

なぜなら、巴里は移動祝祭日なのだから。

~ヘミングウェイ


Rocheハーバーはその昔ライム石の採掘で栄えた小さな港でSanJuan島の北西にポッカリと空いた入り江に位置する。夏になると吹く南西風から寄港する船を良く守り、ピーク時には250ものヨットがずらりと舳先を並べる。彼のジョン・ウェインもこの港に所有の客船で立ち寄ったとか。

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我々は朝8時半にこの港を後にして15海里離れた北東に位置するSucia島に向かった。

風は南東25ノット。

40フィートのBreeze号はフランスのBeneteau社製で逆向きの潮流をモノともせず海原を進んだ。

たかだか時速10マイルそこそこのスピードで素晴らしい爽快感を得られるのがヨットの醍醐味だと思う。
それは、風を絶妙に帆にうけたときに走る背筋のゾクゾクとして体感される。


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風と水。このたった二つだけの駆動力を駆使して人類は数千年の間七つの大海を旅したのだ。
血が騒ぐのはそのせいかもしれない。



空はつき抜けるように青く、右舷の向こうに深碧の絵具で一条払ったようにOrca島が横たわっていた。

港を後にしたときには気温は28℃を超えていたが海上では16℃で肌寒い。舵を取りながらフリースを着込む。

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ただ一直線に目的地に向かうクルーザーと違いヨットは角度の妙技だ。風向きを計算に入れながら最短時間を練る。
タッキングが必要なければそれはそれでけっこう、その日は風の女神が微笑んだということ。


この日もそんな日だった。Breezeは絶妙な傾斜角を保ちながら優雅に島の入り江に滑り込んだ。


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ムーリング・ブイになんとかラインを繋げると風を受けて船はゆっくりと左右に揺れた。
忙しく服を軽装に着替え、キャビンの冷蔵庫から冷えたビールを取り出す。儀式のようにクルーとビール瓶をかち合わせるとのどに流し込む。甲板の上を風が流れるのを頬で感じてふたくち目を口に含む。

南に眼をやるとちょうど入り江の淵にマウントレイニアがかかっていた。
夕暮れには必ず不思議な薄紫色に染まる。今日もそんな日だろう。

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向かいに座ったロシア人の相棒が深々とため息をついた。

「このまま、ここに住めないかね」

ぼくは笑いながら二本目のビールを空けた。

この麦酒の味は一生忘れない。

なぜなら、これは移動祝祭日なのだから。


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